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『水死』をめぐるオープンセミナー(6/13)

2024年5月31



NEWSに掲載した通り、東京大学HMCオープンセミナー「大江健三郎『水死』を読む」が、6月13日(木)17:30-19:00、オンラインで開催されます。

2009年に発表された書き下ろし長篇『水死』について、『大江健三郎論 怪物作家の「本当ノ事」』(光文社新書、2024年)の著者である井上隆史氏にご講演いただきます。

また井上氏のご講演に先立って、文庫担当の阿部賢一准教授が、文庫所蔵の『水死』自筆原稿資料についての報告を行います

『水死』は、老作家・長江古義人が、幼少時代に経験した父の死を主題に「水死小説」の執筆に取り組む姿を描いた作品です。故郷の谷間に帰還し、父が遺した資料が詰め込まれた「赤革のトランク」を手にした彼は、父の肖像を追う中で、女優ウナイコを擁する劇団「穴居人(ザ・ケイヴ・マン)」との協同作業に参画していくことにもなります。

長年にわたって大江作品の一つの核となってきた「父と天皇制」の問題を、新たな手法で突き詰めた、「後期の仕事(レイト・ワーク)」の大作です。

文庫には、自筆原稿および校正刷(初校〜第三校まで)が所蔵されており、これらの資料を検討することによって作品の生成過程が立体的に浮かび上がってきます。


今回のHMCオープンセミナーは、『水死』という作品、そしてその自筆原稿研究がもたらす可能性について知ることができる機会になるかと思いますので、ぜひご参加いただけますと幸いです。

ご参加には事前登録が必要ですので、奮ってお申込みください。


(菊間晴子)