北山敏秀氏の論文「大江健三郎『沖縄ノート』の自筆原稿を読む―「あまりにも巨きい罪の巨塊」という言葉の生成と、その意味―」が、『文藝論叢』第104号(大谷大学文藝学会、2025年)に掲載されました。
北山氏は、大江健三郎文庫が所蔵する『沖縄ノート』(岩波新書、1970年)の自筆原稿に注目し、「①原稿用紙のマス目に書かれた最も初めの稿」→「②原稿用紙上での①に対する修正」→「③書籍として刊行された定稿」(81頁)という推敲過程を精査することを通して、「集団自決」裁判でも争点となった「あまりにも巨きい罪の巨塊」という言葉(および「屠殺者」という表現)の生成過程を浮かび上がらせています。そこから見えてくるのは、1970年の政治・社会状況下において、日本人として沖縄に対峙した際の大江の思考、そのなかにあった葛藤です。
新たな角度から『沖縄ノート』を読み解き、大江健三郎の草稿研究の可能性を示すご論文です。ぜひご覧ください。
(菊間晴子)